ワーズワースの庭

EZ085_L.jpg皆さんはとある場所で「イングリッシュガーデン」と目にしたとき「このボーボーに生えた手入れの無い草木の、いったいどこがイングリッシュなのだろう?」といった素朴な疑問を抱いた経験ありませんか?(笑)

あの無造作にみえた庭園。実はあれも「計画的な混乱」とよばれる「風景式庭園」の一つであり「ランドスケープガーデン」と呼ばれるもの。「風景式庭園」とは、長い年月をかけ自然に溶け込んでいくように変化も計算された庭園のことをさします。

17世紀、フランス貴族の間では古代建築絵画や風景画が流行しましたが、まもなく壁に飾られた古典的な絵画では飽き足らなくなり、現実風景をそのまま窓の外に形成したいと考えるようになりました。そこから庭にも絵画を描くような作庭方法がとられ、この方法を「フォーマルガーデン」と呼びます。これは本来の自然美に反した人工庭園で、絵画同様に平面的な構成になっており、低めの草花で色を埋め込むように形成されているのが特徴です。

この庭園形式はその後イギリス王侯貴族の庭園にも取り入れられますが、18~19世紀以降、この従来のイギリス風景庭園に対するアンチテーゼから、自然の風景さながら、高低・遠近感ある植栽、自生植物による作庭「インフォーマルガーデン」が浸透するようになりました。これが「風景式庭園」=一般的に「ランドスケープガーデン」と呼ばれる庭園です。

イングリッシュガーデンは本来、人と自然が共生することを喜び、自生のリズムに逆らわず、ゆっくり時間をかけて育てていく庭。高い木々の葉影からは光がさし、池の周りを曲線の小道が細く続く。四季折々の花を目で楽しみ、香りに包まれ、ハーブを食し味わい、薬草に治癒を求めるそこは癒しと安らぎの空間。

庭はいつも私達に急がずゆっくり今を生きる大切さ、創造する素晴らしさを教えてくれてるような気がします。

 大地を美しくするために、
 人間の用心深い心を元気づけるために、
 神は花を作った。

 そして一茎の花から知恵を集め、
 いつも快い感謝を忘れないものが、
 最も幸福である。
             ワーズワース