萩の咲く頃

20140924.jpg
秋の七草にも詠まれている萩の花。花の色は紅と白があり、種類も多く、また異名も多く持つ花です。たとえば歌には「鹿」と詠まれることが多く、鹿がいつも萩に寄り添っている姿をして、「鹿の妻」「鹿妻草」という異名もあるそう。
しかし秋を代表する花でありながら、今現代においては、花の名前こそ知れど、意外とその姿を思い浮かべることのできない花の一つかもしれませんね。種類の多さもさながら、古くは万葉集にも最も多く詠まれた花であり、142首あります。それだけ愛された花だといえるでしょう。
高円の 野辺の秋萩 な散りそね 君が形見に 見つつ偲はむ
 (高円の野に咲いている秋萩よ、散らないでおくれ。皇子さまの御形見として偲びたいから。)
我妹子(わぎもこ)に 恋ひつつあらずは 秋萩の 咲きて散りぬる花にあらましを
 (あなたに恋をしないで、あの秋萩のようにただ咲いて散ってしまえばよかった。このまま生きていても、あなたは私の恋にこたえてはくれないのだから。)
 
さらに歌においては特に露、月と詠めば独特の風情があります。
一家(ひとつや)に遊女も寝たり萩と月 松尾芭蕉
しら露もこぼさぬ萩のうねりかな 松尾芭蕉
白萩のしきりに露をこぼしけり 正岡子規

零れるほどに花をつけ、しなやかにしだれ咲き、冬にもなれば後腐れなく枯れてしまう花の姿は、女の生き方を思わせる強さと美しさを感じさせます。あなたの傍でも今頃どこかでいるでしょうか。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
ハギ 花言葉「前向きな恋」