秋の残光 燃えたつ紅葉

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「日本人は木の葉も花と見る」と、昔ある西洋人がいったといいます。本来もみじは「もみいづる」ことで、燃えいずる様子をいったもの。
俗に、赤色を「紅葉(こうよう)」、黄色を「黄葉(こうよう)」、褐色に変わるのを「褐葉(かつよう)」と呼ぶこともあります。
オーストリアやハンガリーなどの中欧とドイツでは植生や緯度の関係で「紅葉」ではなく「黄葉」になります。ドイツではクリスマスに向けて秋深まるこの季節に対する思い入れはつよく、とくに10月を「GoldenerHerbst~黄金の10月」と呼び、どの町や山村に立ち寄っても、木々の黄葉美しい街並みを堪能できます。森を歩き自然と共生してきたドイツ人の自然を尊ぶこの感性は、とても日本人に似ているような気がします。
日本では、楓、ハゼ、蔦、柿、桜、ブドウ、銀杏など、落葉樹や草の葉が秋の冷たい空気や霜に当たって、赤や黄に色を変えていきます。とくに紅葉、黄葉する木のうち、美しいものは柏紅葉、漆紅葉などと、木の名前を付けて観賞するところから「名木紅葉(なのきもみじ)」といいます。
雑木の紅葉は赤や黄にとどまらず、褐色やオリーブ色、銅色などと葉一枚一枚が秋の日差しを受け、残光に燃え立つばかりの華やかな色に染め上げていきます。自然のいとなみの枯れに入る前の艶といったところでしょうか。
そんなこの季節にあってもっとも美しい野趣の色は、どの季節に見るどんな高貴な花より色っぽく、これほどに日本人でよかったと思う季節は他にありません。ああ、山に行きたい。落ち葉踏みしめ、雑木林の中へ。
秋の日はさびし切なし部屋の棚あらゆる花をもて飾れども 与謝野晶子