夏の名残のバラ

IMG_2031_s.jpg「The Last Rose Of Summer」は詩人トーマス・ムーア(1779-1852)の詩で歌い継がれるアイルランド民謡。過ぎゆく夏を惜しむようにして咲く一輪のバラをみつけた時に作ったとされるこの美しい詩に、ジョン・スティーブンソン(1761-1833)が曲をつけました。御存知の方も多いことでしょう。

日本では「The Last Rose Of Summer」を原曲とした唱歌が、里見 義の作詞で知られています。原曲の「バラ」が「白菊」となっていますが、花の名残り朽ちるさまに、人が最後まで節操を守ることの大切さを重ねあわせ、訓えといてるようにも受け取れます。

 庭の千草も、虫の音も、 かれてさびしく、なりにけり。 
 ああ白菊、ああ白菊。 ひとりおくれて、さきにけり

 露にたわむや菊の花 霜におごるや菊の花。
 ああ あわれあわれ ああ白菊 人の操も かくてこそ

原曲は 歌劇「マルタ Martha」の主題曲としても知られており、映画「庭の千草 原題:Three Smart Girls Grow Up 」ではディアナ・ダービンが流麗に歌い上げます。1939年の映画です。またもや古い映画ですが^^しかし昔の女優とはなんてグラマラスで、エレガントで、そしてなんてドラマティックな人生なのでしょう。

「The Last Rose Of Summer」はメンデルスゾーンの 「夏の名残のばら」幻想曲 ホ長調がピアノのために、またヴァイオリンでは、エルンストの「夏の名残のバラ」変奏曲などあり、古くから多くの作曲家に愛されてきた曲であることがうかがえます。原曲を少し離れ、技巧的な演奏を耳にするのも、またいいものです。

最近ではヘイリー(Hayley Westenra )やケルティックウーマンの歌声で耳にされた方も多いかもしれませんね。

アイルランド民謡には私達が幼少のころから耳にしてきた曲も多く、どこか懐かしく美しい。ダニーボーイ、サリーガーデン、春の日の花と輝くなど、どれも訳詞が素晴らしいので原詩の美しさまではなかなか伝わってきませんが、どの曲も郷愁ただよい、日本人の心に打つ名曲ばかり。

 夏の名残のバラ 一人寂しく咲いている 
 他の花々は既に枯れ散った
 真の心が枯れ果て 愛する者がいないこの世の中で 
 誰が一人で生きられようか
            The Last Rose Of Summer
 
今宵 たまにはしっとり、クラシックな夜でもいかが?