蓼食う虫も

イヌタデ、ヤナギタデ、ハナタデと、蓼(たで)の種類はいがいと多く、ひと言に説明はしがたいのですが、その葉は古くから暮らしの中で活用されていた、いわば日本のハーブです。
蓼の葉がもつ青い香りとピリッとした辛味は、昔から食あたりや消化不良に効くとされ、また生葉をもんで虫よけにも使われたといいます。
夏ともなれば、鮎など魚にそえられた蓼酢が知られるところでしょう。あの青い切れあるさわやかさ。眼に浮かべるだけで、すっと食欲が回復する気持ちになりますから、これぞ生葉の薬効といえますね。
さて蓼といえば、この葉の苦味さえ好む虫がいるということから「人の好みはさまざま」という喩えに使われます。そう、「蓼食う虫も好き好き」です。
さしあたり自分とは、好みが合わないと思える人も、実はその違いに奥の深さがあり、気づくと意外に面白いなと思います。物事に関心の強い人は、たいがいに、自分には持ち合わせない独自の視点があるもので、つまり相手の好みを知ることで、新たな自分に気づくのです。
何か違うと思っても、すぐさま敬遠したり否定するでなく、しばし観察しながら待ってみる。そうするうちに、相手のことがわかってくることもあり、またその違いを好ましく思える時も来るのだから、心とは不思議な仕組みになってるなあと思います。
蓼食う虫も好き好き。なるほど私のことですね。今日もいちりんあなたにどうぞ。
タデ 花言葉「健康」

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。