11月
小春

玉の如き小春日和を授かりし 松本たかし
昨日はふたたび暖かな一日になりました。11月は凩にはじまり、寒い日があったかと思えば急に春のような陽気がやってき、またいっそう寒くなり、と小春をはさみながら冬を深めていく月です。
この冬の初めの「小春」に対して、夏の初めには「麦秋」がありました。
麦秋(ばくしゅう)は初夏のころ、麦にとっては収穫期の「秋」なことからついた季節の異称。今や麦秋と聞いて小津を想起する人もそう多くないと思いつつ、思い出しては懐かしい。そして小春ほどのなじみはなくとも、日本の情景をよくとらえたいい名称と思います。
さて小春。古くは徒然草の中に「十月は小春の天気」と記されているとも知りました。陰暦の10月ですからちょうど今の頃でしょう。ふたたび虫が顔出したり、時ならぬ花が咲いたりする、これも小春の便りです。
しかし日中の陽気とはうらはらに、日暮れるとまた急に冷え込みますから。暖かにしてお過ごしくださいね、おだいじに。今日もいちりんあなたにどうぞ。
サクラ 花言葉「わたしを忘れないで」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。