11月
通草(あけび)

口あいて五臓の見ゆるアクビかな
秋の野山でぶらんとした紫の実をみつけたら、それがアケビの実です。誰が作ったかは不明ですが、先の句にもあるような、アクビしたかのような、ぱかんと開いた口のなかには、確かにそれとも見えるような果実がみえます。
そのグロテスクは、むかし父から「うまいぞ」とお道化るように差し出されて以来の食わず嫌い。
アケビを見るたびに、なぜうちのお父さんは、ああも生るもの取るもの口に入れるのか、と、げんなりした思い出がよみがえります。(田舎で元気にしております)笑
アケビは「開け実」の転訛とも「アキエビ」の変化とも言われますが、この「エビ」は葡萄の古称で、葡萄茶(えびちゃ)というと、このアケビにもみられる茶色がかった葡萄色のことをいうんだそうです。
今だこの実を食べようとは思いませんが、この錆び色ばかりは、見つけるたびに美しいなと魅入ります。
さて気がつけば、明日は立冬。いよいよ冬隣りまできました。今朝にはやっと季節らしい雨も降りました。もとの青空にかえるころには、また日ざしも弱くなっているでしょう。今日もいちりんあなたにどうぞ。
アケビ 花言葉「才能」


インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。