10月
沈丁花は朝早く、金木犀は一日の終わりに漂う。

今年はじめて金木犀の香りに包まれました。澄みきった秋空に広がる花の匂いの濃さたるや、あの小さな花のいったいどこに、秘めているのだろうといつも思う。
日本では橙黄色を金木犀、白色を銀木犀と呼びます。原産地の中国では黄花を金桂、白を銀、赤を丹桂というそうです。
陰暦八月の異称に「桂秋」とあるのは、文字通り木犀の花が咲く秋をあらわしているから。「桂月」ともいいます。
月には木犀の大木が生えているという伝説があり、これは中秋の名月の頃、月に生える桂花の巨木が花をつけ、その花色が月を金色に染めるという言い伝えです。
夕暮れどき、どこからともなく漂ってくる金木犀に気付くだけで、秋の深まり感じるこの季節。沈丁花は春の朝早くに漂い、金木犀は秋、一日の終わりに香りが届く。そうあれは、月から香ってくるからなのね。今日もいちりんあなたにどうぞ。
寂しさが人生に美しさを加える
落日にとっておきの輝きを加え、
夜気に心地よい香りを添える
-ヘンリー・ロリンズ
キンモクセイ 花言葉「変わらぬ魅力」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。