パンジー 花言葉「私を思って」

■ 物想いの花 パンジー
古いドイツの花物語に、パンジーの由来が語られています。むかしむかし、パンジーもスミレのように野原に自生していた頃がありました。けれど、その香りの美しさに魅了された人間たちが、血まなこになって探し求め、やがて野原を荒らしてしまいます。
その様子を見たパンジーは、三位一体の神(Trinity)に祈りました。
「どうか、これ以上人間に探されることがないように、この香りを取り除いてください」
以来、パンジーは人を惹きつける香りを失いました。しかし今に至るまで、その愛らしさと色彩は、この花独自の魅力として私たちを和ませています。
■ パンジーと「三位一体」の象徴
パンジーは英語で pansy、その語源はフランス語の pensée(思索・物想い) に由来します。三枚の花びらを重ねた姿が「三位一体」の象徴とされ、「思索」「想い」を意味する花として親しまれてきました。
時を経ても、パンジーは「恋の花」「物思いの花」としての意味を失っていません。香りを持たない代わりに、色や姿そのものが想いを伝える力を持ち続けているのです。
■ シェイクスピアに描かれたパンジー
シェイクスピアの『ハムレット』第4幕第5場にも、パンジーは象徴的に登場します。オフィーリアが差し出す花々のなかに、パンジーもありました。
“…and there is pansies, that’s for thoughts.”
それから、これはパンジー、物想いのしるしよ。
思索や記憶、そして愛のしるしとして語られるパンジー。その存在は、文学や芸術においても深い意味を与えられてきました。
■ さいごに
香りを失ってもなお、人々に想いを届ける花。パンジーは、失うことで別の輝きを得た花なのかもしれません。物想いの夜、パンジーを目にすれば、静かに心を映す鏡のように感じられることでしょう。
今日もいちりんあなたにどうぞ
パンジー 花言葉「私を思って」
古いドイツの花物語より。
むかし昔パンジーにもスミレのように野原に自生していた頃がありました。しかし香り麗しいパンジーを、血まなこになって探し続けた人間の熱狂は、悲しいことに野原の破壊をもたらします。その様子を見たパンジーは三位一体の神(trinity)に願います。
「どうかこれ以上、人間に探されることがないように、この香りを取り除いてください」と。以来、人を魅了する香りを失くしたパンジーですが、今では品種改良も重ねられ、香りはなくともその愛らしさは、この花独自の魅力です。そして今に至っても「三位一体」の象徴であり、思惑を意味する花であり、恋の花であることも不変ですね。物想いの夜に。今日もいちりんあなたにどうぞ。
“…and there is pansies, that’s for thoughts”
-Hamlet IV.v
それから、これはパンジー、物想いのしるしよ。
-ハムレット第4幕第5場
パンジー 花言葉「私を思って」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。