5月
枇杷
見上げると枇杷の実がなっていました。花は十一月ごろに咲くそうです。小さい頃に、近所でなって落ちていたのを、傷のないのを、掌にそっとつつんで、大事に持ち帰ったことがありました。なあんだ枇杷かと笑われましたが、おかげで、そのあたたかみと美しさが、自分だけのものに思えてよかったのを憶えています。
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うるんだオレンジ色をして、割れば艶やかな種子がふたつみつ。味は凡、うすら甘く、これといって表現のほどにもないのですが、見つければ、ああ生ったなったと嬉しくなり、手にとれば、あんな特別が思い出さされるのだから、あれもまた、初夏のあかるい風物詩です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
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やはらかき紙につつまれ枇杷のあり 篠原 梵
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ツツジ 花言葉「つつしみ」
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。