結実

音さやぐおち葉が下に散りてをる
この栗の実の 色のよろしさ
若山牧水
10月は結実。一年これまでじっくり時間をかけそだててきた実をとり、種を手にとり確かめる、10月は手ごたえの月です。
人にも同じことが言え、長らくかけてきた時間を振り返り、小さいなりに成長や手ごたえを感じられる頃。
なかなか思うような成長が見込めなくても、次はもう少し大きな実がなるかもしれないと、次の季節の手ごたえに、期待をして水をやり、余分な枝を刈り、待つ。
いまはこの、完全ではない見栄えに将来への不安が重なるものの、一方で、目の前の歪や物足りなさは、これまでにはない価値感や、好奇心を与えてくれることもあります。
小さな手応えかもしれませんが、そうして結ばれた実を、手にとり実感するのが10月。今がここ。ここからが次。そう信じて、水を撒き、草を刈り、枝葉を育ててゆくのです。
見ていれば分かります。実は落ちても木は枯れないこと。種をまけばまた花が咲くこと。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
クリ 花言葉「私に対して公平であれ」

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。
「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。