9月
彼岸過ぎにて

曼珠沙華 咲く野の日暮れは 何かなしに
狐が出ると おもふ大人の今も
木下利玄
町にこびり付いた暑さも和らぎ、やっと過ごしやすい気温になりました。ながいながい夏からの解放、そんな安堵を見ていたか、やっと彼岸花も咲きだしました。
本来は彼岸の頃になると突然咲き出し、彼岸が過ぎると急に消えてしまう。そんな様子を狐にたとえ、狐の松明(きつねのたいまつ)、狐のかんざしなどとも呼ばれます。
彼岸花。この花見るたび思い出す、花を摘んで帰っては、縁起が悪いと一瞥された幼い日。それでもこの花見ると、意志あって咲くのだろうと、こんな強さが欲しいなと、憧れにも似た心地で、じっと眺めたものでした。そんな昔の記憶も、胸の底にこびりついたまま。でも今ではだいじな思い出です。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
ヒガンバナ 花言葉「再会」

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。