島唄の花 デイゴ 花言葉「生命力」

■ 沖縄の花 デイゴと「島唄」
「でいこの花が咲き 風を呼び 嵐が来た」──宮沢和史作詞『島唄』の冒頭を覚えている方も多いでしょう。実は沖縄には、この歌詞と重なる言い伝えがあります。それは「デイゴの花が見事に咲くと、その年は台風の当たり年になる」というもの。
デイゴは沖縄の県花で、花期は春から初夏にかけて。3月から5月頃、真紅の花が燃え立つように枝いっぱいに咲きます。しかし、毎年同じように咲くわけではなく、花の量は年によって変わります。沖縄では古くからその咲き具合を「夏の台風の兆し」として占ってきました。「デイゴがよく咲いた年は台風が多い」──自然と共に生きてきた人々の暮らしの知恵です。
■ 『島唄』に込められた想い
『島唄』は一見すると男女の別れを描いたラブソングのように響きます。しかし実際には、宮沢氏が沖縄で出会ったおばあさんの語り──「沖縄戦での悲劇と平和への祈り」に心を打たれて生まれた歌といわれています。
沖縄戦は、デイゴが咲く季節に始まりました。
- 春、デイゴの花が咲き始めた頃、米軍の攻撃が始まった。
- 初夏、花が咲き誇る中でも戦闘は続き、多くの命が失われていった。
サトウキビ畑で出会った愛する人と、サトウキビ畑の洞窟で永遠の別れを迎えた──そんな現実があったのです。
「島唄よ風に乗せて、海の彼方にいる友や愛する人に届けてほしい」
「この沖縄の悲しみを本土にまで伝えてほしい」
歌のメッセージは、単なる恋の歌を超えて、平和への願いと鎮魂の祈りへと昇華していきます。
■ 名曲が生まれる背景
『島唄』が発表された当初は、そのメッセージが誤解されたり、批判を受けたりもしたといいます。しかし年月を経て、この曲を通して沖縄の文化や歴史と向き合えた人が増えたことも事実です。
私たちにとって夏は、向き合うべき歴史の記憶が多く残る季節。直接の体験はなくとも、歌や物語を通して、その魂に耳を傾けることができます。
沖縄だけでなく、それぞれの「故郷」や「大切な人」を思うとき、この歌は誰の心にも重なるものがあるのではないでしょうか。名曲が生まれるということは、歴史や文化、そして祈りを次の世代へ受け継ぐということ。『島唄』がいつまでも歌い継がれることを願ってやみません。
■ デイゴの花言葉
沖縄の空に燃えるように咲くデイゴの花。その花言葉は「生命力」。
台風を呼ぶといわれるほど強烈に咲く花姿は、逆境や自然の厳しさをも生き抜く力を象徴しています。平和を願う歌に寄り添うように、「生命をつなぐ花」として人々の心に刻まれています。
■ さいごに
深紅の花が枝を覆い尽くすように咲くデイゴ。その力強さは、沖縄の歴史や人々の祈りと重なり、今もなお歌や記憶の中で生き続けています。
今日もいちりんあなたにどうぞ
デイゴ 花言葉「生命力」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。