オカトラノオ 花言葉「優しい風情」

梅雨があけ、ますます夏が漲りだしました。暑中見舞いの季節です。
「暑中」とは、二十四節気の「小暑」から「立秋」の前日までをいい、暑中見舞いのお便りも、この間に出すようにします。しかし近年では梅雨も忘れるほどの日照りが続き、立秋が過ぎても暑さが残りますから、なんだか「残暑見舞い」のほうが、時期としては長く思えます。
昔は「お中元」という習慣も、いまより色濃くありましたね。本来の「中元」は「祖先の魂祭」とされ、嫁いだり分家した一族が親元に集まる際、それぞれが祖先へのささげ物を持ち寄ったのが起源とされます。お世話になった方や、仕事でお付き合いがある人々に、贈り物をするようになったのは、江戸時代以降の習慣だそうです。
今でこそ、かのような贈答の習慣は次第に影を潜めてますが、相手への「お元気ですか」の心づかいは、いつでも贈りあえるもの。いつ届いても、やはり嬉しいものです。
七月は文月。七夕の行事になぞらえて、お互いの無事を確かめるために、お便りや贈り物をして気持ちを伝えあう月といいました。
物でなくてもいいでしょう。あなたの想像力は何にも代えがたい贈りもの。そして優しさは、何よりも心に伝わるお便りです。
さて今日の花はオカトラノオ。オカトラノオは、野山や道ばたに自生する多年草で、長く伸びた花穂の先に小さな白い花をつけます。
その姿が虎の尾のように見えることから「虎の尾」の名がつき、特に野の丘に生えるものを「丘虎の尾」と呼びます。
一方向にしなだれるような独特のフォルムは、どこか控えめで、それでいて芯の通った美しさを感じさせます。
丘虎の尾(オカトラノオ)について
和名と英名:丘虎の尾(おかとらのお)/Gooseneck loosestrife
学名:Lysimachia clethroides
科名:サクラソウ科(Primulaceae)
属名:オカトラノオ属(Lysimachia)
原産地:東アジア(日本、中国など)
開花時期:6月~8月
花言葉
・忠実
・貞操
・優しい風情
花言葉の由来
「忠実」「貞操」という花言葉は、まっすぐに伸びながらも風の方向にやさしくしなる花姿から生まれたといわれています。
群れ咲いていても決して自己主張しすぎず、控えめに、しかし着実にその存在を感じさせてくれることから、「忠実な心」や「変わらぬ想い」の象徴とされてきました。
また、白く小さな花が穂の先に向かって順番に咲いていく様子には、ひとつひとつの時間を大切に重ねていくような、丁寧な生き方が重なる花です。
おわりに
今日の花はオカトラノオ、花言葉は「優しい風情」。
その花姿には華やかさこそありませんが、花の佇まいには確かな品と、芯のある美しさが宿っています。
長い夏のはじまりに、ささやかな涼花をごあいさつに代えて。
暑中お見舞い申し上げます。きょうもいちりんあなたにどうぞ。


インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。