5月
十薬(どくだみ)

昔から身体の毒を追い出す薬草として使われてきたドクダミ。その名も「毒をため除く」「毒痛み」が転じたとの説があります。
ドクダミと言えば、その臭気は知られたものですが、しかし真っ白な花の群生に出会ったときの嬉しさは、他の花ともちがう高揚を感じますね。
どくだみの 花のにほひを 思ふとき
青みて迫る 君がまなざし
北原白秋 『桐の花』より
この歌にある「君」は、白秋が思いを寄せていた、人妻の俊子のことだといいます。お世辞にも好い匂いとはいえぬドクダミの花であるのに、白秋にとっては、俊子との関係が禁断の恋だったが故、この花の匂いに苦みた感情が重なって、記憶に残ったのでしょう。
その時の心の在り方で、同じ自分でありながら、花を見る眼も届く匂いも、まったく違うのだから、本当に不思議。
今年もこの花が咲く季節になりました。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ドクダミ 花言葉「白い追憶」

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。