3月
椿(つばき)

あなたたちとなら私の楽しい時間を
分かち合うことができるでしょう
この世は 喜び以外はすべて狂気なの
楽しみましょう
束の間の儚い恋の喜びを
咲いては散る花の様な 限りある喜びを
楽しみましょう 私たちを誘う
焼けつくような愛のささやきをジュゼッペ・ヴェルディ『椿姫/La traviata』
椿、とは書いて字の如く、ツバキは春をあらわす木の代表格。古くから、めぐり来る春の喜びを、伝える花木のひとつでありました。
国字とされる「椿」は、夏の「榎」、冬の「柊」と同様に、季節の木と見立てているとされますが、実は中国にも「椿」の字はあり、中国においての「椿」には「ながく久しい」といった意味があるとのこと。そこから長命なことを美称して「椿寿」というようになったそうです。
朽ちてもなお咲かんとばかり、光に向くこの花には、辛いことも悲しみも笑い飛ばしてくれる、力強さとやさしさがあります。
眺めれば、赤い椿、白い椿、八千代つきせぬ花の数、目に飛び込んでくるこの艶に、どうして胸躍らずにいられましょう。ほら、ヴィオレッタも言っていた。あなたたちとなら、私の楽しい時間を、分かち合うことができるでしょう。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ツバキ 花言葉「誇り」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。