3月
桜草(さくらそう)

桜草みんな話は空にぬけ
長谷川かな女
忘れな草、宵待ち草、水仙は雪中花、スズランは君影草。日本の花の名前は、目にしても声に出しても、美しい名前が多くあり、人の心情を花に委ねたような名もあれば、期待や願いをこめた名など、それら紐解くたびに、先人が花に寄せた心情を思い知るような気分になります。
桜草は日本原産の草。桜をひいきにする日本人らしさの現れた、桜にみたてた名前です。その品種名も、乙女桜、雛桜、化粧桜、などあり、銘々の名だけみても、桜への愛着が感じられますね。
園芸品種も多く、色も可憐な桃色、鮮やかなピンク、気品のある白など、花色にみるグラデーションの豊かさからも、人に好まれてきたこの花の歴史を知るような思いがします。江戸時代には、武士の間で桜草の栽培が流行ったこともあったそうです。
さて東京は、ようやく桜の開花宣言がされました。しばらく待たされたので、桜が町に咲かぬならと、桜草によそ見をしたとたん、その声は空にも届いたみたいです。
でも我が国の春は、なんと草にも桜が咲くのですよ。おたのしみに。今日もいちりんあなたにどうぞ。
サクラソウ 花言葉「あこがれ」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。