3月
木蓮(もくれん)

白い白い木蓮が
ひとつほっかり
咲きましたためいきみたいな 白さです
モワッとしている 白さです
だからホワッと さびしいんです白い白い木蓮が
春の顔して
咲きました「白い白い木蓮が……」
サトウハチロー
文学上では、霧(きり)といえば秋であり、春といえば霞(かすみ)、そして夜は霞ではなく、朧(おぼろ)といいます。
秋の霧にはその音からしても、冷え冷えした肌感を感じますし、朧といえば温もりを感じるのだから、日本語とは真に豊かで素晴らしいと思うばかり。
春の夜の、ものみな薄絹に包まれたような柔らかな眺め、幽玄に浮かぶ花には、独特の甘い雰囲気があります。朧月夜に浮かぶのは、桜ばかりでなく木蓮も。これからは、ますます夜も楽しみです。今日もいちりんあなたにどうぞ。
モクレン 花言葉「持続」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。