3月
ひらく

連翹のまぶしき春のうれひかな
久保田万太郎
春の黄色は季節をひらく。とは、これまでにも書いてきました。蝋梅(ろうばい)、万作(まんさく)、山茱萸(さんしゅゆ)、土佐水木(とさみずき)、そして連翹(れんぎょう)。今日の花は連翹です。芽吹きのまえの裸枝に、眩しさいっぱいの花を咲かせる春の黄色の代表格。ですが、この花は近くで見るよりも、遠くから見つけた時のほうが、喜びが大きい花木のように思います。
とかく、桜や桃などのピンクに折り重なって咲く景色は、春に寄せる有難みを膨らませ、胸に宿る幸福感を、より一層高めてくれます。花に会うのも縁がある。そんなことを思わせてくれる黄色です。
はやいもので三月も最終週を迎えました。今朝の東京の空は、期末ならではの沈黙と繁忙が入り混じったような、しぶい色をしています。でもあと数日すぎれば、花の便りも届き、天にも春がひらくでしょう。花がひらけば心もひらく、運もひらく、そして花に黄色が重なれば、いよいよ四月もひらく。さ、がんばりましょう。今日もいちりんあなたにどうぞ。
レンギョウ 花言葉「期待」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。