1月
風の花(アネモネ)

あらゆる花は自然の中に咲く魂である
-ジェラール・ド・ネルヴァル
ローマ神話の登場するアネモネは、花の女神フローラの夫である西風の神ゼフィロスに見初められ恋に落ちます。
あるときフローラは、アネモネが育てている花だけ、他の花よりも早く咲くことに気づき、たいへんな怒りをみせました。なぜなら、アネモネの花がどの花よりも早く美しく咲くのは、夫ゼフィロスが吹かせる風があったから。つまりそれは、アネモネに対するゼフィロスの愛そのものだったからです。
怒りと嫉妬に苦しんだフローラは、アネモネを神々の花園から追放してしまいました。しかしそれでもアネモネへの愛を失わなかったゼフィロスは、アネモネを美しい花の姿に変え、永遠の愛を誓います。
アネモネという花名は、ギルシャ語の「アネモス(風)」を語源にもちます。英名にも「Wind flower -風の花-」とつけられているように、アネモネは、春のはじめにふく風で、花を咲かせる風の花。
いまも春にふく穏やかな風が、アネモネを優しくなでるのは、彼女を想いつづけるゼフィロスの、変わらぬ愛の証です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
アネモネ・紫 花言葉「あなたを信じて待つ」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。