1月
冬ごもり 春咲く花を

冬化粧、冬紅葉、冬暁、冬苺、冬木立、冬薔薇。これだけ見ても、日本語には「冬」がついた言葉が多いことがわかります。
「冬」は、寒さに冷える「ひゆ(冷ゆ)」が転じたとされる言葉。おなじ冷えるでも、「寒」というと心の隙に食いこむ鋭さ、引き締める強さがありますが、冬は、厳しさばかりではない穏やかさ、春めいてゆくことへの期待、心の弾みが感じられる言葉です。
冬ごもり 春咲く花を 手折り持ち
千度の限り 恋ひわたるかも
柿本人麻呂
これは、冬が去って、春に咲いた花を手にして、いつまでもいつまでも、私はあなたのことを恋い慕い続けています。という恋歌。
万葉集ではこの1首のみに使われている「千度の限り」という表現。いつまでもいつまでも変わらない、ずっと待ってます、という恋人を想い続ける気持ちが、春を待つ期待にも重なって、いとも美しく響く表現です。
俳句で「冬ごもり」は冬の季語ですが、この歌にあるように、春にかかる枕詞でもあります。あと何日かすれば立春、冬について書くなら今のうち、という気持ちになり、今日はこんな歌になりました。
冬ごもり春咲く花を心待ち。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ヒヤシンス 花言葉「淑やかな可愛らしさ」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。