「わかる。ということ」花屋の向こう側

近年は、遠くに離れた場所のことでも瞬時に情報共有できるので、目や耳で得た情報だけで、人の気持ちまで知った気になる危うさがあります。
人は「相手をわかりたい」という欲求が高まると、どうしても身近な手がかりだけで、つじつま合わせをしようとします。相談を持ち掛けられたときは尚のこと、「わからない」という曖昧さに耐えきれず、不安になり、ときには後ろめたさを感じ、持ちあわせの知識や情報を当てはめて、性急に「わかった」にたどり着こうとしてしまう。
このように「知りたい・わかりたい・理解したい」という欲求が、相手の「わかってほしい」を乗り越えてしまうことは、あることです。しかしそんなときほど裏腹に、もとめる共感とはかけ離れてしまい、お互いに理解しあえないジレンマに苦しむことになります。
お伝えしたいのは、「理解」とは不完全なものだということです。どれだけ親身になったところで、相手と一体化することは、ありません。またそれは、相手が求めていることでもありません。
相手の痛みや苦しみを知ったとき、代わりたくても代われないとき、私たちはその無力に苦しみ悲しみを抱きます。けれどその共感こそ、見えずとも支えになっている。それで良しとするのです。
全てを知ろうとしないこと。むしろ理解とは、相手が必要とする時間や、今大切にしているその自由を、奪わないことだと思います。
このようになってほしいという願望をもたず、全てをわかろうとせず、見えなくても見つめて、待つことではないかと、私は思います。家族にも、スタッフにも、友人にも。今日もいちりんあなたにどうぞ。
プリムラ ジュリアン 花言葉「青春の喜びと悲しみ」

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。