華を去り実に就く

連休は各地で夏日になるほどの好天。いかがお過ごしですか。
昨日の朝のこと、いつもの通勤路にある公園から「みてごらん、おおきな梨みたいのがなってるよ」「どこ」と聞こえてきたのでみやると、お父さんとちいさな娘が、ブランコを高くしながら「おおきな梨さがし」をしていました。
見上げるとあったあった。榠櫨(かりん)でした。
榠櫨(かりん)は「花梨」とも書き、あの「かりん飴」のカリンです。知られるように、喉や咳どめにも効くなど「杏一益、 梨二益、カリン百益」ともいわれ、古くから薬用にされてきました。
春になるとボケにも似た淡紅色した可愛い花がぽっと咲きます。秋には大きな実が甘い香りをまとって黄熟します。が、今年は冷えが進まないせいか実もまだ青いですね。
冬枯れの中にこのいびつな黄色をみつけると、それだけで目が慰められ、思わず手を伸ばしたくなるから、やはりカリンは癒しの実、と思います。
しかし春に咲く花は小さいし、実は柿や蜜柑ほどの鈴なりにもならない。薬になっても、まんまでは食せない。木になっても知らせない。季節が見つけてくるのを待っている。まったく余計をしない木であります。
そんなカリンの実を見るけるたびに「去華就実」という言葉を思う。
みかけの華美にはしらず、地味でもいいから堅実に、するべきことに勤しみなさい。
と今朝もまた、カリンの声を聞きました。華を去り実に就く。小さく強く。今日もいちりんあなたにどうぞ。
カリン 花言葉「唯一の恋」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。