10月
10月の返り花は願い花

冬に春の花が咲くなどはよくあり、それを「返り咲き」といいます。小春日和が続く11月ごろに時ならぬ花が咲く、その花が「返り花」。「忘れ花」ともいいます。
咲く花時を違えずと、古い人も花を頼りに季節を知ったよう。しかし最近は、ズレも大きくなるいっぽうで、花も頃を忘れたか、時分がわからず困ってるんじゃないかしらと眺めます。
先日のこと、まだ10月なのに桜が咲いてありました。あれは春の花の性分なのかしら、目にとめたなり魔法のように、追われるような日ごろの気配も消えて、ほのぼのとした安息感に身をひたされました。魔法、ほんとうに。
返り花が咲くと秋がながいときいて、そうあってほしいけれど、どうでしょう。
眺めながら、このままがいいと願いました。もうずっと秋でいいと、桜に願いました。
なにごとの花の思いは知らねども、10月の返り花は願い花です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
サクラ 花言葉「私を忘れないで」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。