9月
曼珠沙華
暑くても寒くても、この時期になると必ず咲く曼珠沙華。花が咲くときに葉がないことから「はみずはなみず」とも呼ばれます。地方によっても呼び名は変わり、いちしばな、いっしせん、幽霊花など、実に400以上もの異名をもつのだそう。
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誰もが知っている花のひとつであり、近代では俳句にも読まれ、日本人とは古くからかかわりの深い花ですが、江戸以前の古典には、登場することは多くありませんでした。妖艶な花姿と色、そして有毒であったが故に、そんなにも万人に嫌われたものでしょうか。
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けれど新しい時代、ねがわくば迷信からも解き放たれ、美しいものは美しいと、こうして、確かにめぐり来る四季のありがたみ、花の良さを、噛みしめ味わいたいもの。秋を知らせる曼珠沙華。視界一面にひろがるこの花を、いつかあなたと見てみたい。今日もいちりんあなたにどうぞ。
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まんじゆさげ 月なき夜も蘂ひろぐ 桂 信子
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マンジュシャゲ 花言葉「思うはあなた一人」
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。