4月
藤
藤の花が咲きました。晩春匂やかに、夏を迎えるこの花は、二季をまたいで咲くので二季草(ふたきぐさ)ともいいます。このゆったりとした花房をみて思い出すのは、歌舞伎でも知られる「藤娘」のお衣装。黒の塗笠に藤の花房を傾げ、「男ごころの憎いのは、ほかのおなごに神かけて…」と、浮気性で意のままにならない男心をなじっては、恋しさやまぬ女心を、酔いにまかせて踊ります。この作品の印象があまりに色濃くて、こんな艶やかで芳しく、いじらしい女性にも、ほんのちょっぴり憧れたりして。いとしと書いて藤の花。今日もいちりんあなたにどうぞ。
好いて好かれて はなれぬ仲は
ときわぎの たち帰えらで
きみとわれとか おお嬉し おおうれし
『藤音頭』
フジ 花言葉「恋に酔う」
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。