ローズマリー 花言葉「追憶」

■ 愛と記憶のハーブ ローズマリー
愛や貞節を象徴し、女性の愛称としても知られる「ローズマリー」。古くからヨーロッパでは記憶力を高めるハーブ、そして「不変の愛」「忠誠」「追憶」を象徴する植物として親しまれてきました。
シェイクスピアの悲劇『ハムレット』にも、ローズマリーは象徴的に登場します。第4幕第5場、狂気に沈むオフィーリアが花々を手渡しながら語るあの台詞──
「ほら、ローズマリーがあるわ。思い出のためにですって。
ねえ、だからお願いあなた、わたしを忘れないで。」
この言葉は、ローズマリーが「記憶」と「不変の愛」を意味することを、現代にまで強く印象づけています。
■ オフィーリアとラファエル前派
このシーンから連想する人も多いのが、画家ジョン・エヴァレット・ミレイによる名画「オフィーリア」。水に浮かぶ女性と共に描かれた草花には、ひとつひとつ象徴的な意味が込められています。ラファエル前派の特徴である細密かつ写実的な描写は、まさに神々しいほどの美しさで、観る者の心をつかんで離しません。
絵画の中のローズマリーは、オフィーリアの愛と記憶、そして失われたものへの「追憶」の象徴として、そっと彼女に寄り添っています。

■ さいごに
ローズマリーは、ただ香りの良いハーブとしてだけでなく、「愛」と「記憶」の花として、古くから人々の生活や祈りに息づいてきました。料理やハーブティーに使われる一方で、冠やブーケに編み込まれ、誓いや祈りの象徴としても用いられてきたのです。
ふとローズマリーの香りを感じたとき、過去の誰かや、あの日の思い出が蘇ることがあります。それは、私たちの心に宿る「追憶」を静かに呼び覚ます、ささやかな奇跡なのかもしれません。
今日もいちりんあなたにどうぞ
ローズマリー 花言葉「追憶」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。