9月
鈴なりな秋に心躍る

初秋のころ、まだ地味で平凡だった花や実も、気温が下がるにつれ、熟すほどに大人び、色っぽく変身していきます。つぶらな形、こっくりとした色。秋に彩る植物は、自ら熟し朽ちるその時まで、美しく生命の豊かを全うするのです。
秋は地味な枯草や枯枝でさえ、その素朴な色に着目するだけでアートに映るから不思議です。一見ゴミにしか見えないような欠けた器も、外に放ったままの錆朽ちた器も、手折った草花を活けてみます。できれば花は艶やかに。器のそばに枯葉を敷き詰めたり、奔放に蔓を絡ませれば野趣な花あそびも立派な作品になって完成。
秋の花活けにお手前なんて必要なし。なぜなら花は昔からこうして心の赴くままに、庭の花を摘み、食卓に飾り、人に贈るなどして、日常の中で愛されてきたのですから。
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。