シソ 花言葉「善良な家風」「力が蘇る」

年々、夏が長くなっていると感じます。この猛暑、また今年も我らが秋を溶かす気でしょうか。今日から8月がはじまりましたが、まだまだ夏の終わりは遠そうです。
夏といえば食欲も衰えがちな季節、しかし食卓では今こそ香味野菜が出番です。シソ、みょうが、青柚子、しょうが、ニッキ、薄荷、わさび、葱。麺にもお豆腐にもお魚にも、刻んだ香味をどっさりのせて、果汁を絞り、夏の香りを存分三昧いただきます。
青葱は、ハーブのチャイブスに似た香り。刻んでクリームチーズに混ぜても、新鮮な味わいです。しょうがの香りと刺激は、そのまま身体にしみわたり、冷房で冷えた体を温めてくれます。赤紫蘇でつくったシロップも夏の楽しみのひとつ。ガラスに注げば色も味わえますね。
思い出すのは子供の頃、夕飯近くになると母に呼ばれては「サンショウとってきて」「シソ10枚」と庭先まで使いに出されたものでした。
庭といっても、お世辞にも手入れが行き届いているとは言えない、それはもう不細工な庭でしたが、けれどあれはあれで、台所に立つ母にとっては卒のない、便利な庭だったのかなと今ともなれば思います。
それにしても、昔は「苦くて辛くて変な味」だった香草が、今ではあの庭の匂いと相まって、郷愁のように感じられるのですから、香りの記憶とは不思議なものです。
他にも、日本にはいろいろな香草があります。しかしその名はいつのまにか「ハーブ名」で知られるようになりました。たとえばハッカよりミント、ニッキよりシナモンと聞いた方が「ああ、あの匂い」と思い浮かべる人もいることでしょう。
一方で、佐久間ドロップの「はずれ味」はハッカ、祖母がくれる地味な包みはニッキ飴、そんな記憶がある私にとって、やはりハッカはハッカ、ニッキはニッキなのであります。わかっていただけるかしら。
そう、先日実家に帰りましたら、庭の端にあのシソ葉がまだ生えているのに気づきました。両親もすっかり年老いて、手入れもされなくなった庭の中に、あのシソだけが青々と残っているのを見て、その生命力に驚くとともに、急に懐かしさが込み上げました。
「シソなんか買わなくたって庭にある」そういえばよく父が言っていました。父にとっても便利な庭だったのかもしれない。そうして眺めていたら、私よりシソのほうがよっぽど親孝行な気がしてきて、なんとなく恩返しがしたくなりました。
何十年ぶりだったかしら。渇いてしぼんだ小さな庭に、おおきく水を撒きました。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
シソ 花言葉「善良な家風」「力が蘇る」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。