チューリップマニア

春を知らせる球根咲きの花が今年もお目見えです。花屋の花は自然に咲くより1~2カ月早く旬を迎えますが、チューリップもそのひとつ。
チューリップといえばオランダの国花として知られます。もともとトルコ宮廷の花だったのを、ヨーロッパの外交使節がオランダに持ち込んだのがはじまりといわれています。
そのオランダで、昔「チューリップマニア」と呼ばれるバブルの時代がありました。チューリップの球根ひとつで大豪邸が建つほど高値で売買された時代です。
もともとチューリップは品種が多い植物ですが、あるとき植物特性の病気により変異種が誕生します。その病変から咲いた花をみた人々は、これまで目にしたことのない色鮮やかな色と異形の虜になり、この花で投資に打って出ることを考えました。
取引の対象は「球根」です。チューリップは翌年にも咲き、分球することで花を増やすこともできます。当時、変異種であればあるほど高値が付くようになったチューリップは、瞬く間に人を熱狂させ投機は高まりました。しかし他国からも供給されはじめ需要過多になったことで、その後はシナリオ通りの終焉を迎えた。という話です。
歴史上、バブルの時代は幾度かありますが、熱狂の対象に植物がおかれたのはこのチューリップが最初といえるでしょう。今後あるかはわかりませんが、歴史は繰り返さなくとも韻を踏む、といいますから、似たようなことはまた繰り返されるのかもしれませんね。
そうそう、エルメスのスカーフの定番「カレ90」にも「チューリップマニア」というコレクションが発表されています。
エルメスの洗練とチューリップの希少性と普遍の美しさ。とっても素敵です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
チューリップ 花言葉「博愛」

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。