花贈りに込める心|「気遣い・優しさ・善意・配慮・思いやり」についてまとめました

Posted on 2025/05/18
花贈りに込める心|「気遣い・優しさ・善意・配慮・思いやり」

日本には、ただ品物を届けるだけでなく、そこに「心を添える」文化があります。
花を贈るときにも――その選び方には、言葉にできない「想い」が静かに宿ります。

とくに日本の贈りもの文化においては、こうした心の機微が、ごく自然に、けれど深く行き交っています。
品物の選び方やタイミング、ラッピング、添える言葉、渡す場面……。そのひとつひとつに、「どんなふうに届けるか」という心配りが込められています。

花を贈る行為は、「言葉にならない思いをそっと伝える手段」であり、花そのものが語る“メッセージ”に、贈り手の心が重なります。人と人との間をなめらかにする5つの心、それぞれの意味と違いをまとめてみました。

言葉心の性質感情 or 行動花贈りにおける役割心理学的ポイント
気遣い予測と準備の力行動相手の状態や状況を想像し、事前に適切な選択をする状況認知・他者志向性
優しさ温もりと柔らかさ感情花の色や形、言葉に表れる“あなたらしさ”が伝わる感情共鳴・愛着行動
善意自発的な好意内面の動機特別な理由がなくても「贈りたい」と思う純粋な心内発的動機・利他的行動
配慮客観的な判断と節度行動・判断関係性や場面にふさわしい色・形・渡し方を選び、マナーを大切にする社会的知性・文化的スキル
思いやり共感と寄り添い感情+行動言葉にしづらい感情や背景を感じ取り、それにふさわしく花を届ける感情認知・共感的配慮

共通するのは、「自分本位」ではなく「相手本位」であること。
日本の花贈りには、このような五つの心が、静かに、美しく息づいています。

花贈りにおいての優しさは、たとえばこんなふうに表れます。
相手の好みに合わせて選んだ色合い。手のひらにおさまる小さなブーケ。
過剰にならないラッピングや、短くても心のこもったメッセージ。
そうしたひとつひとつの中に、「あなたのことを想っています」という気持ちがそっと宿ります。

優しさは、華やかさや豪華さとは違って、贈り手の人柄がにじみ出るものです。
自分のことよりも相手の気持ちを思い、選び、包み、手渡す――その静かなプロセスの中に、優しさは息づいています。

心理学的には、「優しさ」は共感性や情緒的安定性と結びついており、相手の感情を受け止め、それに応じた温かい反応を返す力とされています。
つまり優しさは、人とのつながりを心地よく深めるための、やさしい知恵でもあるのです。

たとえば、季節の花を見てふと思い出した人に、一輪の花を贈る。
特別な理由がなくても、「元気かな」「ありがとうの気持ちを伝えたいな」と、そっと届ける。
そんなさりげない花贈りの中に、善意というまごころが息づいています。

善意は、相手の心をあたためるだけでなく、贈る自分の心もやわらかくしてくれるもの。
それは、行動そのものが誰かのためであると同時に、自分自身の心の奥にある温もりを再発見するきっかけにもなります。

心理学では、善意による行動は「利他的行動」と呼ばれ、人間の社会性の根幹を支える要素とされています。
損得を超えて誰かを思いやる行為には、人の心を満たし、人と人との距離をやさしく縮める力があるのです。

贈りものの文化においては気持ちだけでなく、その届け方にも心を配ることが大切です。
お祝いごとには明るい色を、喪中の方には落ち着いた色合いを選ぶ。
病院へのお見舞いには、香りや花粉の少ない花を選び、渡すタイミングにも気を配る。
こうした一つひとつの選択が、「あなたを思っています」という静かな敬意につながっていきます。

日本の贈答文化には、古くから伝わるかたちや所作の美しさがあります。

それは単なるルールではなく、相手の気持ちを乱さないためのやさしい知恵ともいえます。
「どうすれば相手が心地よく受け取れるか」を考えることこそが、配慮の本質です。

それは、相手が何も言わなくても、「疲れているかもしれない」「少し落ち込んでいるのかもしれない」と感じとる、繊細な感受性。
そして、その想いにそっと応えるように、行動にうつす――そんな心の動きです。

たとえば、元気をなくしている友人に、明るすぎない色合いの花をそっと届ける。
喪中のご家庭に、香り控えめの白い花を手配する。
相手の気持ちを大切に考え、さりげなくそっと寄り添う。
その一つひとつに、「思いやり」という深いあたたかさが宿っています。

心理学では、「思いやり」は共感性の最も高次な表現とされ、相手の気持ちを“自分ごと”として受け止め、行動へつなげる力だといわれます。
つまり、思いやりとは“感じる力”と“届ける力”の両方をあわせ持つ、心の知性ともいえるのです。

日本の贈答文化においては、渡す理由や形式よりも、その背景にある「気持ち」が何よりも大切にされてきました。

  • 「気遣い」は、相手の状況を想像し、先回りして手を差し伸べる心。
  • 「優しさ」は、品物に滲む温もりや、あなたらしい包み方に現れます。
  • 「善意」は、損得を超えて「贈りたい」という純粋な気持ちから生まれます。
  • 「配慮」は、相手の立場や場面に応じたかたちで敬意を示す行為。
  • そして「思いやり」は、相手の言葉にならない部分にそっと寄り添う心。

これら5つの心は、どれが正しい・正解というものではなく、状況や関係性に応じて、重なり合いながら贈りものに宿るものです。

花は語りませんが、その色や香り、形、束ね方、添える一言には、贈り手の想いが確かに表れます。

「あなたを大切に思っています」「今、ふと思い出しました」そんな言葉では言い表せない感情を、花がそっと伝えてくれるのです。

Hanaimoでは、そうした“想いが伝わる贈りもの”をお手伝いできるよう、一つひとつのご注文に、真心を込めてお届けしています。

フラワーギフト専門店 Hanaimo(花以想)店主 鈴木咲子

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ式フラワーデザインに出会い、ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店でドイツ式フラワーデザインを習得。2002年 通販サイトHanaimo開業。

趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。