花手水とは?意味・作法・楽しみ方|心を清める日本の美しい習わし

Posted on 2025/05/16
花手水とは?意味・作法・楽しみ方|心を清める日本の美しい習わし

神社やお寺の手水舎に季節の花を浮かべて飾るこの文化は、見た人の心をやさしくととのえる、日本ならではの美しい習わし。
この記事では、花手水の意味や歴史、訪れてみたい全国の名所、そしてご自宅での楽しみ方まで、丁寧にご紹介します。

花手水とは?意味・作法・楽しみ方|心を清める日本の美しい習わし

もともと「手水(ちょうず)」とは、神社仏閣で身を清めるための儀式的な所作。参拝の前に、心身をととのえるために手や口を水で清めるこの行為は、神聖な場にふさわしい気持ちで向き合うための準備でもありました。

その手水に、季節の花を浮かべるようになったのは、比較的近年のこととされています。とくに知られているのは、京都・長岡京市にある「柳谷観音 楊谷寺(やなぎだにかんのん ようこくじ)」の取り組みです。2017年頃から、参拝者へのおもてなしの心を込めて、四季折々の草花をあしらった花手水を始めたところ、その美しさがSNSなどで話題に。やがて「癒し」や「静けさ」を求める人々の共感を呼び、全国の神社仏閣へと広がっていきました。

また、2020年以降の感染症拡大を受けて、柄杓の共有を避ける動きが広まり、手を実際に洗うのではなく「見て心を清める」新しい手水のかたちとしても注目されるようになりました。

花手水とは?意味・作法・楽しみ方|心を清める日本の美しい習わし

以下に、花手水を楽しむ際の基本的なマナーと心づかいをまとめました。

花手水は観賞用です。手水のように手を洗ったり、花に触れたりするものではありません。水面に浮かぶ花々の彩りや、陽の光に揺れる影を、静かに目で追うだけでも、心が整うような気持ちになるでしょう。

SNS映えする美しさに、思わず写真を撮りたくなるのも自然なこと。ただし、混雑している場所では譲り合いを忘れずに。ほかの方の鑑賞の時間を邪魔しないように、撮影は短時間で、静かに行いましょう。

花手水は、「立ち止まること」に意味があります。せわしない日常の中で、ふと立ち止まり、花と水の静けさに身をゆだねる時間。見つめるだけで、心がふわりとほどけていくような不思議な安らぎがあります。

花手水とは?意味・作法・楽しみ方|心を清める日本の美しい習わし

学問の神様・菅原道真公を祀る、全国的に有名な神社。境内の複数箇所に花手水が施されており、梅や紫陽花、菊など、季節ごとの彩りが楽しめます。
伝統ある神社の厳かな空気の中に、やわらかな花の表情が溶け込み、参拝者の心を静かにととのえてくれます。

花手水の先駆けとして知られる名所。寺の随所に季節の草花を浮かべた手水鉢があり、参拝のたびに異なる風情に出会えます。
特に梅雨時期の紫陽花の花手水は人気が高く、撮影スポットとしても多くの人が訪れます。

関東屈指のあじさい寺としても知られる名刹。池や手水鉢には蓮や紫陽花が浮かび、静謐な空気の中に幻想的な景色が広がります。
安産・子育てのご利益があり、家族連れでの参拝にもおすすめの場所です。

鎌倉を代表する花の寺。手水舎に彩られた花手水のほか、境内のあちこちで季節の植物が楽しめます。
特に6月の紫陽花シーズンは圧巻で、参道から境内まで、雨に濡れた花々の美しさが際立ちます。

花手水とは?意味・作法・楽しみ方|心を清める日本の美しい習わし
  • :浅めのボウルやガラス鉢、陶器、石の鉢など。水を張れるものであれば、お皿状のものでもOKです。透明なガラス製は、花と水のコントラストが際立ち、美しく仕上がります。
  • 花材:季節の切り花や庭の草花など。1~2種類でも十分。花首がしっかりしていて、水に浮かびやすいもの(バラ、ガーベラ、マリーゴールド、トルコキキョウなど)がおすすめです。
  • 清潔な水:水道水でも大丈夫ですが、カルキが気になる場合は一度沸かして冷ましたものや浄水を使うとより繊細な印象に。
  • (お好みで)葉や実物、花びら、小石などのアクセント素材も◎
  • 茎は不要なので、花首から1~2cm下でカットします。
  • 花粉が落ちやすい花(ユリなど)は、花粉を取り除いておくと清潔さを保てます。
  • いくつかの花材を大きさ・色・形でグルーピングしておくと、後の配置がスムーズになります。
  • 器の深さの7〜8分目程度まで水を入れます。深すぎると花が沈んでしまい、浅すぎると浮かびません。
  • 水面が静かであるほど、花の輪郭が美しく映えます。
  • 大きな花から順にそっと浮かべていきます。
  • 次に中くらいの花、最後に小花やグリーンで隙間を埋めると、自然な立体感が生まれます。
  • 花びらが重ならないように、間に少し余白をつくるのが美しく見せるコツです。

直射日光を避けた風通しの良い場所に置くと、花もちがよくなります。

毎日水を入れ替え、しおれた花はすぐに取り除くことで、清潔さと美しさが長持ちします。

フラワーギフト専門店 Hanaimo(花以想)店主 鈴木咲子

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ式フラワーデザインに出会い、ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店でドイツ式フラワーデザインを習得。2002年 通販サイトHanaimo開業。

趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。