【保存版】「ご冥福をお祈りします」は宗派によってNG?|宗教別マナーと正しい弔意の言葉

Posted on 2025/05/03

「ご冥福をお祈りします」は、日常でもよく耳にするお悔やみの言葉です。けれども実は、この表現は宗教や宗派によっては用いない方がよいとされることがあります。たとえば、浄土真宗では「冥福を祈る」という考え方自体が教義にそぐわず、神道やキリスト教でも異なる死生観を持つため、注意が必要です。

Hanaimoでは、大切な気持ちをきちんと伝えることを大切にしています。この記事では、宗派ごとに「ご冥福をお祈りします」が適切かどうかをやさしく解説し、代わりに使える表現もご紹介いたします。どんな言葉が、相手の心にそっと寄り添えるのか──そんな視点から、お悔やみの言葉を見つめなおしてみませんか。

この記事の執筆者
Hanaimo(花以想)店主

お悔やみの場面でよく耳にする「ご冥福をお祈りします」という言葉。大切な方を亡くされた方に向けて、心からのお悔やみと慰めの気持ちを伝えたいとき、自然と口をついて出る方も多いのではないでしょうか。

この言葉の「冥福(めいふく)」とは、仏教における“冥途(めいど)=死後の世界”での“福(しあわせや安らぎ)”を指します。つまり、「冥福を祈る」とは、亡くなった方がその先の世界で安らかに過ごされるよう願う、優しく静かな祈りのことです。

ただ、この表現はすべての宗教・宗派において共通に用いられるものではありません。たとえば浄土真宗では、故人はすでに阿弥陀さまのお力によって浄土に往生されたと考えられるため、「冥福を祈る」必要はないとされています。また、神道やキリスト教にも、それぞれの死生観に基づいた別の言葉が大切にされています。

大切な誰かを悼む気持ちは、宗派に関係なく尊いもの。だからこそ、その想いがより伝わるように、相手の信仰や背景に寄り添った言葉を選ぶことが、何よりの心くばりなのかもしれません。

宗教・宗派 使用可否 理由・備考
浄土真宗 × すでに浄土へ往生したとされるため、冥福を祈る必要がない
浄土宗・真言宗・曹洞宗 冥福や成仏を願う教義と合致している
日蓮宗 寺院や地域により表現への配慮が必要
神道 × 死後は祖霊として神の世界へ還るとされるため、仏教語を用いない
キリスト教(カトリック・プロテスタント) × 「神のもとに召される」という教義のため、冥福という概念と異なる
無宗教・一般的な場合 宗教的背景が問われないため、広く受け入れられている

以下は、各宗教・宗派における「ご冥福をお祈りします」の代わりに使える表現の例です。

宗教・宗派 使用可否 適切な言い換え表現
浄土真宗 × ご縁に感謝申し上げます
阿弥陀さまのお導きのもと、安らかにお過ごしのことと存じます
神道 × 御霊の安らかなることをお祈りいたします
神の御許にておやすみになられますように
キリスト教(カトリック・プロテスタント) × 主のもとでの平安をお祈りいたします
安らかなる眠りがありますように
日蓮宗 心よりお悔やみ申し上げます
故人をしのぶ気持ちを大切に
浄土宗・真言宗・曹洞宗 ご冥福をお祈りいたします
仏の御加護をお祈りいたします
無宗教・一般的な場合 心よりお悔やみ申し上げます
安らかにお休みになられますように

── どの宗派でも失礼のない、言葉のかけ方とは

大切な方を偲び、花とともに想いを届けるとき、言葉にもまた細やかな気遣いが求められます。
宗教や宗派によって考え方や表現が異なるからこそ、「どんな言葉を選べばよいのだろう?」と悩まれる方も多いことでしょう。


お悔やみの言葉に、仏教やキリスト教など特定の宗教用語を含めると、かえって誤解や違和感を与えることもあります。
そのため、「心よりお悔やみ申し上げます」など、宗教色を避けた表現が最も無難で、広く使われています。

ほかにも、たとえば——

「ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます」

「深い悲しみをともにし、心よりお祈り申し上げます」

なども、どの宗派の方にもお使いいただける表現です。


企業関係やご年配の方など、礼儀を重んじる場面では、定型的な文面が安心です。

拝啓
このたびは〇〇様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。
ご家族の皆様には、どうぞお疲れが出ませんようお祈り申し上げます。
略儀ながら、書中にてお悔やみ申し上げます。
敬具

こうした形の整った文章を選ぶことで、相手に誠意が伝わります。


SNSなどのオープンな場所でお悔やみの言葉を述べる場合、より一層の配慮が必要です。
言葉が一人歩きしやすいため、誤解を招かない表現をえらびます。基本的には、オープンな場での声掛けは慎み、個別にDMするなど、人の眼に触れない配慮をするようにします。

「ご冥福をお祈りします」は、多くの人が使う表現ですが、宗教によっては不適切とされる場合があります。大切なのは、相手の信仰や価値観を尊重し、心からの気持ちが伝わる言葉を選ぶことです。

どんな言葉でも、思いやりと敬意を込めて伝えれば、きっとその想いは届くはずです。場面に応じた適切な言葉で、故人とご遺族に寄り添いましょう。

フラワーギフト専門店 Hanaimo(花以想)店主 鈴木咲子

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ式フラワーデザインに出会い、ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店でドイツ式フラワーデザインを習得。2002年 通販サイトHanaimo開業。

趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。