色で旅する、東南アジア5カ国の花贈り

Posted on 2026/06/15

「タイ、ラオス、マレーシア、ベトナム、カンボジア。東南アジアの5カ国をイメージしたアレンジメントは作れますか」。先日いただいたこのご相談は、私たちにとっても新鮮な問いかけでした。それぞれの国の花をそのまま集めるのは、正直なところ簡単ではありません。それでも花には、「色」というもうひとつの言葉があります。5つの国を色で描く、花以想なりの花贈りの考え方をお話しします。

「タイ、ラオス、マレーシア、ベトナム、カンボジア。東南アジアの5カ国をイメージしたアレンジメントは作れますか」。

先日、こんなご相談をいただきました。旅の記憶を花に残したい、その国に縁のある方へおくりたい――理由は違っても、ひとつの贈りものに5つの国を込めたいという発想をお持ちになる方は、きっと他にもいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、私たちがどうお応えしたか、また今後のご参考になるよう、花贈りの考え方とあわせてご紹介します。

  1. それぞれの国を象徴する花
  2. 「国の花」をそのまま届けることの難しさ
  3. 花の“色”で、その国らしさを描く
  4. 5つの色を、ひとつの花束にまとめる
  5. テーマのある花贈りを、花以想がお手伝いします

それぞれの国を象徴する花

まず、5カ国にはそれぞれ、その土地を代表する花があります。色や香り、文化的な意味あいまで、どれも個性的です。


特徴
タイラーチャプルック黄色い花を房状に咲かせる、ゴールデンシャワーツリー。王室や繁栄の象徴とされます。
ラオスドクチャンパ白や黄色の香り高い花。プルメリアとして知られ、寺院や街路でよく見られます。
マレーシアハイビスカス鮮やかな赤が印象的。現地では「ブンガ・ラヤ」と呼ばれます。
ベトナムハス泥の中から清らかに咲くことから、高潔さの象徴とされています。
カンボジアロムドゥオル小さく甘い香りを持つ花。伝統的な文学や歌にもたびたび登場します。

「国の花」をそのまま届けることの難しさ

こうして並べてみると、5つの花をそのまま束ねたくなります。けれど正直に申し上げると、これらを切り花として日本で安定して揃えるのは、なかなか難しかったりします。

プルメリアやハイビスカスは南国の生花としては存在しても、アレンジメントに使える状態で確実に入荷するとは限りません。ハスやロムドゥオルにいたっては、入手そのものが現実的とは言えないのが実情です。

「ご希望に沿えません」とお断りするのは簡単。でも、お客さまが本当に届けたいのは、植物の名前ではなく、その国が持つ空気感のはず。そう考えて、私たちは別の方法をご提案できるよう考えました。花の種類ではなく、色とまとう雰囲気で、それぞれの国を描くというのはどうだろう。

花の“色”で、その国らしさを描く

5カ国の印象を、色と雰囲気に置き換えると、こんなふうに整理できます。

タイ ― 明るい黄色で華やか

房状に咲くゴールデンシャワーの黄色を主役に。オンシジュームの小花が連なる姿は、あの花房の軽やかさをよく思わせます。ひまわりや黄色のガーベラを添えれば、明るく開放的な表情になります。

タイ
ラーチャプルック
黄色い花を房状に咲かせる、ゴールデンシャワーツリー。王室や繁栄の象徴とされます。

ラーチャプルック。黄色い花を房状に咲かせる、王室や繁栄の象徴とされる花。

オンシジュームは、小さな王女がダンスしてるかのよう。

ラオス ― 南国らしい甘い香り

プルメリアの淡いピンクから白、中心の黄色へと続くやわらかなグラデーションを、色で再現します。スイートピーやフリージア、芳香系のスプレーバラで「甘い香り」までそっと添えられます。

ラオス
ドクチャンパ
白や黄色の香り高い花。プルメリアとして知られ、寺院や街路でよく見られます。

ドクチャンパは白や黄色の香り高い花。プルメリアとして知られ、寺院や街路でよく見られます。

マレーシア ― 情熱的な赤

ハイビスカスの鮮烈な赤を、つやのある花で表現します。赤いガーベラやダリア、アンスリウムを主役にすると、生命力あふれる南国らしい力強さが生まれます。

マレーシア
ハイビスカス
鮮やかな赤が印象的。現地では「ブンガ・ラヤ」と呼ばれます。

ハイビスカスは南国花の象徴。

ベトナム ― 清楚で上品

泥より出でて清らかに咲く蓮の気高さを、白と緑の清涼感で。白いトルコキキョウやバラにグリーンを効かせると、凛とした上品さがまとまります。

泥の中から清らかに咲くことから、高潔さの象徴とされる蓮の花。

泥の中から清らかに咲くことから、高潔さの象徴とされる蓮の花。

白いトルコキキョウ リシアンサス

カンボジア ― 優雅で繊細

小さく甘く香るロムドゥオルの趣を、淡いクリーム色の小花で。小輪のスプレーバラやブバルディアに繊細なグリーンを合わせ、奥ゆかしく優雅な表情に仕上げます。

カンボジアの国花「ロムドゥオル」は、植物学上は ロムドゥオル と呼ばれる花で、学名は Sphaerocoryne affinis です。

カンボジアの国花「ロムドゥオル」

オレンジ色のスプレーバラをいれると、温かみある雰囲気に。

5つの色を、ひとつの花束にまとめる

黄・赤・ピンク・白・クリーム。並べると、けっして奇をてらわない、明るくおおらかな色合いです。だからこそ私たちは、全体を温かみのある、華やぎのあるトーンでまとめることをご提案しました。

5つの国を均等に主張させるのではなく、明るい色を土台に、赤を一点の差し色として効かせる。そうすることで、ばらばらの寄せ集めではなく、「東南アジアという、ひとつの大きな光の方向」を感じられる花束になります。一輪一輪が違う国を背負いながら、ひとつの空気の中で響き合う――そんなアレンジメントを思い描いています。

黄・赤・ピンク・白・クリーム。並べると、けっして奇をてらわない、明るくおおらかな色合いです。だからこそ私たちは、全体を温かみのある、華やぎのあるトーンでまとめることをご提案しました。

テーマのある花贈りを、花以想がお手伝いします

今回のような「テーマのあるアレンジメント」は、既製のギフトにはない難しさと、何より楽しさがあります。花以想では、こうしたご相談を一つひとつうかがいながらお作りしています。

花以想にご相談いただけること

  • LINEでのご相談――旅の写真や、思い描く雰囲気をお送りいただければ、色合わせから一緒に考えます。
  • 発送後のお写真共有――お作りした花の仕上がりを、発送後にお写真でお送りします。どんな表情になったかをお手元でご覧いただけます。
  • メッセージカードのご用意――贈る背景に合わせて、添える言葉もご一緒に。

「こんなイメージは花にできますか」という入り口で構いません。形になるかどうかも含めて、まずはお気軽にお寄せください。

花は、その土地へ実際に行かなくても、色や香りで記憶や憧れを連れてきてくれます。今回のご依頼は、私たちにとっても、花の伝える力をあらためて考えるきっかけになりました。あなたの心の中にある風景を、花の色に置き換えてみる。そんな花贈りを、これからもご一緒できたらうれしく思います。

フラワーギフト専門店 花以想 店主 鈴木咲子

インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店に勤務し帰国後、2002年 フラワーギフト通販サイトHanaimo開業。趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)『ベストエッセイ・2025』(光村図書出版)随筆掲載。